給与計算は企業活動の中でも「当たり前に正しく行われるべき業務」とされています。

毎月きちんと給料が振り込まれるのは、従業員にとっても企業にとっても当然のこと。

もちろんその通りです。
ですが……その「当たり前」、実は静かなる高難度ミッション!!
給与計算は、見た目はシンプルでも中身は超複雑。
複雑な法令と個別事情が絡み合い、毎月が真剣勝負です。片手間でできる「作業」では決してありません。

給与計算ミス5選

1. 未払い残業

残業時間の計上漏れ、割増率の誤適用、みなし残業制度の誤運用などがあると、労働基準法違反として労働基準監督署の調査対象になることがあります。
是正勧告で済めばまだ良い方で、従業員からの訴訟に発展するケースもあり、企業の信用や財務に大きな影響を及ぼします。

2. 社会保険料の控除漏れ・誤控除

社会保険料は年に一度、定時決定(算定基礎届)により金額が改定されます。また、固定給が変動になった際に随時改定(月額変更届)により改定されることもあります。
その反映が適切に行われないと、給与から控除するべき額と実際の納付額にズレが生じます。
年金事務所からは正しい金額で請求が来るため、企業側が不足分を負担することになったり、従業員に説明がつかなくなったりすることも。

3. 手当の支給漏れ・過払い

皆勤手当、無事故手当、通勤手当等の支給漏れ「未払い賃金」として扱われ、従業員とのトラブルに発展する可能性があります。うっかりミスで信頼が崩れることがあるので注意が必要です。
逆に、過払いがあった場合でも、従業員が返金に応じないケースは少なくありません。
「一度支給したものを取り戻す」ことは、法的にも心理的にもハードルが高く、紛争化するリスクがあります。

4. 就業規則との乖離

就業規則があるのに、実際その通りになっていないことがよくあります。就業規則以上のことをしていればトラブルになりにくいですが、就業規則の基準に達していなければ未払いとして紛争に発展することがあります。

5.給与ソフトの設定ミス

よくある例としては、残業等を計算する時につかう、年間平均所定労働時間が実際とは異なる時間で登録されていることがあります。法律を下回る金額になっていれば未払いになってしまします。

また、年齢の登録ミスによる保険料の誤控除、扶養の人数の登録ミスによる所得税の誤控除等、多岐にわたります。

なぜミスが起こるのか

給与計算は、単なる「数字の処理」ではなく、法令と実務の高度なバランスが求められる業務です。

特に近年は、育児・介護休業制度、短時間勤務、フレックスタイム制など、多様な働き方への対応が求められ、給与計算の難易度は年々上がっています。
さらに、担当者が一人で業務を抱える「属人化」が進むと、退職や急病などの際に業務が滞り、引き継ぎ不足によるミスが連鎖するリスクも高まります。

社労士が提供できる専門的サポート

社労士は、給与計算に関する法令知識と実務経験を兼ね備えた国家資格者です。
企業の状況に応じて、以下のような支援が可能です。

● 制度変更への対応支援

労働時間制度の見直し、育児・介護休業制度の改正、短時間勤務制度の導入等、労働・社会保険分野では制度変更が頻繁にあります。社労士は最新の情報を把握し、企業の給与計算にスムーズに反映できるようサポートします。

● 就業規則・賃金規程との整合性チェック

給与計算は、就業規則や賃金規程と密接に関係しています。手当の支給条件や残業の取り扱いなど、規程と実務が食い違っていないかを確認し、必要に応じて改訂の提案も行います。

● 担当者支援

担当者が制度を正しく理解していないと、ミスが発生しやすくなります。社労士は、給与計算の基礎や注意点をわかりやすく伝え、個別支援を通じて、ミスの予防と業務の安定化を図ります。
また、給与に関する従業員からの問い合わせ等について、専門的な内容になると社内担当者では分からない事もあります。社労士が第三者として後方支援することで、トラブルの未然防止や早期解決につながります。

まとめ:給与計算は経営リスク管理の一環

給与計算は、企業の信頼と法令遵守を支える重要な業務です。ミスを未然に防ぐためには、制度への理解と業務体制の整備が不可欠です。
社労士の専門的なサポートを活用することで、企業は安心して本業に集中できる環境を整えることができます。