
12月、世間はクリスマスムード一色!でも社労士事務所はクリスマスキャンセル界隈…。
毎年12月は社労士事務所はてんやわんやです。
通常の給与計算業務に加え、賞与計算、給与計算での年末調整の結果反映、年末で退職する人・年始から入社する人の手続き準備、予期せぬ労働トラブル…(揉め事は12月ではなく閑散期でお願いします…。)
クリスマスムードなんてイチミリもありません。
特に賞与計算は気を付けるポイントがたくさんあり、細心の注意を払いながら取り組んでいます。
従業員さんが楽しみにしている賞与の計算を間違えると、従業員さんから恨まれちゃいます!笑

そこで今回は、賞与計算のポイントについてまとめてみました。
年末の賞与の支給前に確認すべき社会保険・税金のポイントや、よくある控除ミスとその対策を具体的に解説します。
賞与とは
賞与は、企業が年末や夏季に従業員へ支給する一時金で、通常の給与とは別に支払われます。
賞与は企業の業績や個人の評価に基づいて支給されることが一般的であり、支給の有無・金額・時期などは企業ごとに異なります。
就業規則等で明確な規定を設けている場合には支払いが必須となります。※例「従業員に賞与を7月と12月に、基本給の2か月分支払う」等。
そのように規定している場合で、賞与の支払いがなく、従業員さんが労働基準監督署に申告をすれば、企業は労働基準監督署から支払いを指導されることになります。
ただ、中小企業では一般的には、「〇か月分支払う」などの具体的な数字を書いていなかったり、「業績によっては支払いをしない、または支給を延期することがある」などの予防線をはってリスク対応をすることが多いです。規定の確認をしておいた方がよいかと思います。
賞与も通常の給与と同様に、所得税・社会保険料の対象となるため、正しい控除処理が必要です。
特に年末は、年末調整や翌年の保険料決定に関わるため、賞与支給には慎重な対応が求められます。
社会保険の控除に関する注意点
社会保険料は給与だけでなく、賞与にも適用されます。
年末賞与の控除では、通常とは異なる注意点があります。3つの注意点について解説します。
1.「標準報酬」の上限に注意する
社会保険料の計算には、給与・賞与それぞれに「標準報酬」の上限が設定されています。
特に賞与に対しては、厚生年金保険では「1 か月あたり 150 万円」、健康保険では「標準賞与額」に基づいた上限があり、年度の累計額573万円(年度は毎年4月1日から翌年3月31日まで)となっています。
これを超えて保険料を控除してしまうと過剰徴収になるおそれがあります。
支給額が高額になる年末賞与の前には、控除対象額が上限を超えていないかを必ず確認しましょう。
2.退職日と保険料控除のタイミングに気をつける
年末に退職する従業員がいる場合、退職日によっては保険料の控除義務が変わります。
賞与を支給した月の途中で退職した場合は、社会保険料は発生しません。
例
賞与支給月・・・12月
- 12月1日~12月30日までの退職 → 賞与の保険料は発生しません。(賞与から社会保険料を天引きしない)
- 12月31日に退職した場合 → 賞与の保険料は発生します。(賞与から社会保険料を天引きする)
賞与額が多ければ控除される保険料も多いので、給与計算をされる担当者は保険料を控除するかどうか間違えないように注意が必要です。
3.賞与の支給回数確認
賞与を年間3回まで支給する場合と、4回以上支給する場合とでは扱いが異なります。
年間3回までは賞与として「標準賞与額」を元に保険料を計算しますが、年4回以上の場合は「標準報酬月額」として計算をすることになります。(賞与として支給したとしても社会保険上は賞与扱いにならない。)
年末の賞与支給前に行っておきたいチェックリスト
賞与支給は、ただ金額を決めて振り込めばいいものではありません。
事前に確認すべきポイントを押さえておくことで、控除ミスやトラブルを未然に防ぐことができます。
1.従業員情報の最新化(扶養・等級など)
扶養家族の増減や変動がある場合は、賞与支給前に必ず反映させましょう。
とくに年末は、結婚や出産などライフイベントが重なりやすいため、申告情報の更新漏れが多くなります。
社員への確認と申告依頼を早めに行いましょう。
2.年末調整の還付清算をどのタイミングでするのか
年末調整した結果を賞与で還付する企業さんも多いので、どのタイミングで還付清算するのか確認が必要です。
税理士さんとの連携が重要になってきます。
3.就業規則の確認
就業規則にのっとった対応が必要となります。自社の就業規則がどのようになっているか確認をしておく必要があります。
まとめ
年末賞与の支給は、従業員にとって嬉しい一方、企業側にとっては税金・社会保険の計算ミスが起こりやすい重要業務です。
今回ご紹介したような控除ミスのパターンや事前確認項目をしっかり把握しておくことで、ミスのない賞与支給が実現できます。
制度変更や複雑な控除に不安がある場合は、専門家のサポートを受けるのも一つの手です。
正確な処理で従業員からの信頼を高め、気持ちよく新年を迎えましょう。




